松本は料理がうまい
なぜそれを俺が知っているかというと
まだ俺が隊長になってすぐの頃・・・・
『あー!隊長!また食堂ですか!』
『なんだよ・・・悪いかよ・・・』
『そんなのばっかり食べてると栄養が偏ります!』
『だが・・・俺 料理出来ねーし・・・』
『なら、あたしが作ってあげますから』
そう松本が言ってから週一に、松本が俺に弁当を作ってくれるようになった。
“好きな物と嫌いな物は均等に!”
らしい・・・・
しかし、ここ最近松本の料理を食べていない。
それどころか、最後に飯を食ったのはいつだっただろうか・・・
それぐらい、俺たちはまともな食を食っていない。
それは、旅禍の進入、藍染の裏切り
色んな事が一気に起こりすぎて、腹の事なんか気にする余裕さえなかったからだった。
「隊長・・・お体の方は、大丈夫なんですか?」
「あぁ、心配かけたな。もう大丈夫だ」
「根・・・つめないで下さいよ、病み上がりなんですから・・・」
「分かってる」
四番隊の早期治療のおかげで、俺は直ぐに現場復帰をした。
むしろ、寝てなんかいられない。何かしたくてたまらなかった。
自分の無力さを紛らわすために・・・
すると、松本が急に俺の腕を掴んで引く。
まだ傷の痛みがあるせいで、俺は無抵抗に松本に引かれるまま、ソファーへと強引に座らせられた。
「何だ!松本っ」
「これ、食べて下さい」
「あ?」
すっと俺の前に差し出されたのは弁当だった。
「隊長、何も食べてないんですって?
卯ノ花隊長から聞きました。ずっと点滴ばっかりだったと・・・」
そう言う松本の小さな声とは裏腹に出された弁当は、かなり大きかった。
「沢山作りましたから、食べて元気になって下さい」
「・・・・・・・」
正直・・・・・・・・・嬉しかった
ここんとこずっと、周りの者たちのギクシャクした雰囲気、態度
全てがうざったくて、イライラしていた。
そんな時、久しぶりの松本の弁当を見て、俺は少し、心が温かくなるのを感じた。
「・・・・すまない」
「そう思うなら食べて下さい」
「ああ、いただく」
松本らしい派手な風呂敷を広げ、重箱のフタを開ける。
すると、その弁当の中には・・・珍しく俺の好物ばかりが入っていた。
「・・・なんだよ、いつもは嫌いな物も食えってうるせーのに・・・
この弁当・・・偏りすぎじゃねーか・・・」
松本の好意が嬉しくても、素直になれない俺は、文句を言ってしまう。
そして、俺は好物の玉子焼きに大根おろしをたっぷり乗せて、かぶりつくように一気に食った。
が
「辛れ・・・・」
「え・・・!」
「大根おろしがすげー辛れー・・・」
そして、手を止めずに次に煮物を口にしたが、それも辛かった。
「お、おっかし〜な〜??いつも通りに作ったのに・・・」
「お前な・・・・」
と、ふと、俺は昔ばあちゃんに言われたことを思い出した。
“いいかい、冬獅郎。大根おろしは怒りながらすると辛くなってしまうんだよ”
“ふ〜ん”
“料理はね、作る人の気持ちが料理にでるの。だから優しい気持ちで作るんだよ・・・”
そう ばあちゃんが言っていた・・・
そうか・・・お前は俺の弁当を作りながら...裏切ったアイツのことを考えていたのか・・・
だから・・・・・辛かったんだな
そう思うと、心がずっしりと重くなった。
胸がドクンドクンと重く唸る。
「すみません隊長!作りなおしますから!!」
「いや、いい。 食う・・・全部」
片付けようとする松本の手を掴んで阻止する。
辛くて辛くて 何度もむせた
でも全部食べてやる...
この料理のように、辛いお前の心も
全部 全部 俺が食らい尽くしてやる
だから・・・
「そんな顔すんな」
今にも泣きそうな松本・・・
お願いだ、そんな顔しないでくれ
お前の料理は最高なんだ
俺なら絶対そんな顔、させない
だから、アイツの事なんか忘れて
俺のことだけを思って作ってくれ...
「すみません・・・」
小さく謝る松本・・・
アイツのせいで、お前がそんな顔をするなら俺が・・・・
俺がアイツからお前を奪う
笑っていつもの美味い料理を作ってくれる松本を
俺が・・・・・・・・愛すから・・・
本気でお前を奪う