そして、食事も一段落して、食後の一杯のお茶を飲むと、
コトリと湯呑みを置いた隊長が急に咳払いをした。
それが合図のように、あたしも無意識に背筋を伸ばす。
「婆ちゃん、今日ここに来たのは婆ちゃんに言いたいことがあるからなんだ」
隊長の真剣な眼差しに、お婆さんも湯呑みを置いた。
あたしも何だか緊張して、ドキドキと心臓が鳴る。
「俺、乱菊を嫁にもらいます」
そう言った隊長が、手をつき、頭が畳にくっ付くのではないかと思うほど、
深く頭を下げた。
その行動にあたしは思わず「へ?」と間抜けな声を出してしまった。
だって、今日は結婚の報告をしに来たのだから、普通に頭を上げたまま話せばいいのに、
何故隊長が頼み事をするかのように、自分のお婆さんに頭を下げるのだろうか…
訳が分からない頭で色々考えていると
「幸せにしてあげるんだよ」
「はい」
とお婆さんも普通に受け止め、置いてけぼりをくらったあたしは、
意味が分からないと隊長の服をチョイチョイと引っ張る。
「どうして冬獅郎さんが頭を下げるんですか?それはむしろあたしの方なんじゃ…」
「何言ってやがる。乱菊も俺たちの立派な家族だろ?
だから、婆ちゃんはお前にとっても婆ちゃんなんだよ。
それで、俺はその婆ちゃんに頭下げて乱菊をくれって頼んでんだ。
まぁ、お前の望む“娘さんを”ってやつは言葉が違うから言えねーけどな」
「…冬獅郎さん…」
隊長の言葉に、あたしは苦しくなるほど胸が締め付けられた。
あたしがさっき言った言葉を覚えていてくれて、
あたしの欲しい言葉をくれた事がとても嬉しくて、思わず目頭が熱くなった。
「乱菊さんも何度も同じ飯を食べてるんだ、同じ釜の飯を食べればみな兄弟、
家族みたいなもんさ。それに、この流魂街では血の繋がってない他人が家族としている。
ワシらが家族になってもおかしくないんじゃよ。
…冬獅郎は家族として見てなかったようじゃがね」
自分の事のように嬉しそうに笑うお婆さんの言葉で、あたしは我慢の限界に達した。
目頭から熱いものがこぼれ出す。自分の意志とは勝手に頬を伝う。
止めようと目に力を入れると声が出る。
「幸せになるんじゃよ」
「はいっ…ありがっとございますっ…」
お婆さんの言葉に安心し、ひーと泣くあたしに、
隊長が懐から手ぬぐいを出して、優しくあたしの涙を拭ってくれた。
こんな暖かい家族を、あたしも早く持ちたいと、心から思った・・・