今宵、酒を飲む大人達が酔いしれる頃


あたしは日付が変わるこの時間を今、
京楽隊長と一緒にお気に入りの居酒屋でお酒を飲んでいた。






「で?どうなの?」
「何がですか?」



お互いが酒豪のせいで、かなりの本数の瓶が空になって机の上に転がっている。
周りにはまだ微かにつまみが残っているお皿が数枚。

それをつつきながら、あたしは大量のお酒のせいで回った酔いに、
少し舌足らずになりながらも、京楽隊長の言葉の意味を追求する。



「何がって、日番谷隊長だよ〜」
「えっ?隊長が何ですか?」
「上手くやってるのかい?2人は本当に凸凹コンビだからさ」
「あ〜…あたしがよく仕事サボっちゃうからね〜ちょっと良いコンビとは言えないかも…」



と苦笑いで言うあたしに向かって京楽隊長は無言で首を振る。

あ、きっと京楽隊長はこんな話を聞きたいんじゃないんだ。
そう酔った頭で理解した。

流石京楽隊長…見てないようで、ちゃんと見てる人。
京楽隊長はこう見えて案外口も固いし、お酒の席だから言ってしまおうか…


しばらく考えたあたしは、ゆっくりと口を開いた。



「あたし…錯覚に陥るんです…」
「錯覚?」



あたしは小さく頷くと、ちょっとだけお酒が入ったお猪口をくいっと飲み干す。



「…隊長は形は子供ですが
強さ、考え、行動、器の広さ。どれをとっても大人顔負けで、
あたしは時々大人の男性と話してる気になってドキドキしてしまうんです…」
「……」



京楽隊長は無言で、でもしっかりとあたしの瞳を見て聞いてくれた。


そう、あたしの中で徐々に大きくなっている感情を、
京楽隊長には見抜かれていたんだと思う。



「でも…あたしと隊長じゃ…釣り合わない。
背はいずれ大きくなったとしても、年の差は変えられないから…」



言ってて自分で虚しくなった。
お酒が入ってるからマイナス思考になっているのね



「乱菊ちゃん、君は人を外見で選ぶのかい?」
「……いえ」
「それに、君はさっき言ってたじゃない。錯覚に陥るって。
その時点で君は彼の中身を見て、日番谷君の事を……」
「それ以上はおっしゃらないで下さいっ…」



他人の口からは言われたくない。
まだ自分でさえ自覚していない感情を、他人に指摘されたくない
現実にしたくない。


…でも……心のどこかで答えを求めてる。
誰かに導かれたいと望んでる。


そんな複雑な感情のままで、あたしは隊長の側に居ても良いのかと悩む。
そんな気持ちで、隊長の背中を護る権利があるのだろうかと…


らしくもない事をウジウジ考えていると、京楽隊長があたしの頭を大きな手で優しくポンと叩く。



「乱菊ちゃんは、もっと素直になるべきだよ」
「素直………」
「そう。苦手だろうが、それを受け止めれるほどの器を、彼は持っていると僕は思うけどね」



そう言って京楽隊長はスクリと席から立ち上がった。



「ここは僕が出すから、君はもう少し休んでから帰りなさい」
「………ハイ…」



京楽隊長からお水を受け取り、お酒で火照ったカラダに冷たい水が澄み渡る。
少し落ち着いたかも。



そして、帰って行く京楽隊長の背中を見送りながら、
先ほどの京楽隊長の言葉を頭の中で繰り返す。





“素直になる”





「はぁ〜…それが出来ないから…困ってんのよ…」


「何をだ?」
「!!?」



聞き慣れた声に振り向くと、後ろには家着に着替えた
仏頂面の日番谷隊長が腕を組んで立っていた。



「どっ!どうして隊長がこんな時間にこんな所にいるんですかっ!」



酔いが一気に醒めちゃった。
てゆーか酔ってられない。今目の前に、ついさっきまで想ってた人が立っているのだから。

その人が、何故もう寝ているであろうこんな時間に此処にいるのかが謎でたまらない。



「…いや、かわやの帰りにお前の部屋の前を通ったら、
お前の霊圧がないのに気づいてな…また酒でも飲んでるんだろうと思ったんだが…
明日の業務に差し支えちゃこっちが困るからな…迎えに来た」
「…迎え…ですか…」



男の人と会ってるとか思わなかったのかしら?
まだまだお子ちゃまな隊長
でも、そんなところが可愛い隊長


あ、これを分かってて、京楽隊長はあたしを残して帰ったのか…


…でも、四六時中一緒にいる隊長の霊圧に気づかないなんて………



「お前…四六時中一緒にいんのに、上司の霊圧に気づかないほど飲んでんのかよ
……お前をそこまで酔わせれるのは…京楽のおっさんか…」



以心伝心。
あたしと同じこと考えてる。
それさえ酔ったあたしには幸せに感じられる。


そんな事を思っていると、隊長がそっとぶっきらぼうに手を出してきた。



「ほら、帰るぞ。悪いが俺はお前をおぶるのは無理だからな」
「っ///!………え〜おんぶがいいですよ〜」
「馬鹿言え!お前をおぶったら俺が潰れちまう!」
「しっ!失礼ね!これでも軽い方なのよ!」
「脂肪の塊抱えてんのにか?」
「隊長のセクハラー!」
「だー!うるせー!置いて帰っちまうぞ!」
「いや〜ん!手繋いで帰るのぉ〜」
「そんだけ騒げれば大丈夫だ。俺は1人で帰る」
「待って下さい!たいちょぉ〜!」



こんなやりとりが至福に感じる。
なんだかんだで甘い隊長。





あぁ〜あ
















好きになちゃった。














でも、この関係をまだまだ壊したくない。

弱虫なあたしは、この関係にすがっていたい。

甘えて、甘えて、頼って。

だからね、京楽隊長…





あたしはまだまだ素直になれそうにありません…









終わり