蝉が鳴き、太陽の光が照りつける日。
人はそれを“真夏”と呼ぶ。






「あーづーいー…」


そんな真夏の中、涼しくなる物など何1つ無い執務室に、
あたしの溶けるような声が響く。


「………うるせぇ」
「たいちょ〜!こんなに暑かったら溶けちゃいますよ〜!
氷輪丸解放して下さいよ〜」
「…てめぇ、上司の斬魂刀を何だと思ってやがる」


汗を流しながらも、暑そうな隊長羽織りをキッチリ羽織って
実務をこなす、生真面目な日番谷隊長と、
それをソファーに寝ころびながら眺めるあたしとの
暑苦しいやり取りを、さっきからどれだけ続けただろう。


「それより仕事しやがれ」
「暑くて仕事なんて出来ません!」
「言い切るなよ…」


はぁ…とため息をついた隊長は、持っていた筆を置き立ち上がった。


「どこに行くんです?」
「かわやだ」


そう言って隊長は勢い良く執務室から出ていってしまった…。
流石に怒らせたかと不安に思い、反省の意を込めて仕事しようと思ったが、
やはり暑さのせいで体が動かない。


「はぁー…やっぱりダメだ…頭がボーっとしてきちゃった…暑さのせいね」




しばらくの間、ソファーに寝転がっていたが、やっぱり暑い。

額に手を置き、自分の視界に太陽の光が入らないように手で影を作る。
そして、隊長が居ないことを良いことに、あたしはいつも開いている胸元を
更にギリギリまで開かせた。
これで少しはマシ。


「これじゃー谷間に汗疹が出来ちゃうじゃない…」


ハァと出るため息。
こんなところ隊長に見られたら怒られるな〜なんて思いながらも、
こうも暑けりゃ他人の目なんて気にしてられない。


「隊長が氷輪丸を解放してくれたら涼しくなるのにな〜隊長のケチーー!!」
「誰がケチだって?」
「ぅわあ!隊長!ビックリしたー……ちょっとこぼれた……」
「///隠せバカ…」


頬を少し赤らめた隊長。
あっ見たわね?とちょっと思った。でも隊長を怒らせるのはマズいから、
あたしは名残惜しいが、胸元をいつものように着直す。


「でも隊長?今日はかわや長かったですね?いつもなら5分で戻って来るのに。
隊長が居ない時間が凄く長く感じましたよあたし!」
「はいはい。ちょっと寄り道をしてたからな」


隊長が寄り道なんて珍しいなんて考えていると、隊長がチョイチョイと手招きをする。
あたしは無愛想な招き猫のそばに行くと、隊長がソファーに座れと言うから、
あたしは不思議に思いながらも素直にソファーに座った。


「ちょっと髪の毛上げろ」
「?…こうですか?」


隊長があたしの後ろにまり、
あたしは隊長の言われたとおりに髪の毛を上へと上げる。


すると



「ぅひゃあーー!!!」


何かがあたしの背中を伝った。しかも直に。

驚いて後ろを向くと、お腹をかかえて笑う隊長の姿があった。


「何するんです!つか、何したんですか!」
「何って、お前が暑いっつーから、死覇装の中に氷を入れてやったんだよ。
どうだ?涼しくなったろ?」
「もぉーー!!」


隊長は変なところで子供っぽい。つか、悪戯が好きだ。
どうなるかなんて分かっていながらする。

あたしは慌てて冷たい氷を取り出そうとするが、死覇装の奥で
しかも背中だから自力じゃ取れない。しかし、
死覇装を脱ぐのは面倒くさい。


「隊長〜取って下さいよ〜」
「はいはい、分かったよ」


再びあたしは隊長に背を向け髪の毛を上げた。
そして、隊長の手があたしの死覇装の中に入る。


「ンッ…くすぐったい…」
「我慢しろ」
「隊長の手…冷たい…」
「さっきまで氷握ってたからな」


スルスルと隊長の冷たい手が、あたしの背中に伝ってゆく。
隊長の冷えた指先が、背骨へと這う。
時々、触れるか触れないかのラインを沿ったり、
あたしの背中を撫でる。


「ちょっと隊長!そこは氷には関係ないでしょ!」
「そうか?」


白々しく言う隊長に、あたしは心の中で「エロ餓鬼」と叫んだ。
それでも隊長のては止まらず、あたしの背中を撫でる。
その手の動きはまるで・・・愛撫のようだ・・・


「・・・っん///」


あたしも思わず声が漏れる。

すると、隊長があたしの死覇装の中から氷を取り出し、あたしはホッとした。
何だか隊長の手つきが艶めかしくてドキドキしてしまったからだ。


「も〜急にするからビックリするじゃないですか!」


隊長は取り出した氷を見つめると、
さっきまであたしの背中の中に入っていた氷を舌先でペロリと舐め


「だが涼しくなっただろ?」


と言って氷を口の中に含んだ。
その姿が妙に妖艶で、あたしはつい見入ってしまった。


「確かに…涼しくはなりましたよ?でも…」




きっと潤んでいるだろうあたしの瞳を見た隊長はニッと笑うと、
近づきソファーに片足をかけ、あたしの頬に触れる。
自然とあたしも目を瞑る。





今日のキスは…
初めて感じた、冷たいような熱いキスだった………
 
 
 
 
終わり