隊長からのプロポーズを受けた1週間後、
あたし達は隊長の実家である流魂街の潤林安に行くことになった。

勿論、隊長のお婆様に結婚の報告を伝えるためにである。



「ね〜冬獅郎さん、この着物派手じゃないかしら?嫌みとかない?」
「あーうるせぇな!何でも似合っちまうんだからどれでも一緒だろ!」



着物をバラまいて選んでいたあたしに、いつもの隊長羽織りを羽織った隊長の一喝が飛ぶ。
その言葉の中に、ノロケが入っている事なんか気づかずに。



「だって大切なご報告ですもの!場違いな格好なんて出来ません!」
「それもそうだがな…」



そう呟いた隊長がドカッとその場に座る。どうやらもう少し待ってくれる様子。
それに甘えたあたしは1着の着物を手に取り、せっせと着替える。


「あ〜あ、あたし1度で良いから“娘さんを僕に下さい”って言われたかったな〜」
「2度もあったらマズいだろ」
「もうっ!あげ足取らないで下さい!」
「悪リィ悪リィ。でもよ、娘じゃねーけど、一応市丸はお前の家族みてーなもんだろ?
…俺、絶対アイツにだけは頭下げたくねーぞ…」
「ギンなら面白半分で拒否しそうですよね…」
「待てよ!もしお前と結婚したら市丸とは兄弟になるのか!…うぇっ…」



今にも吐きそうな隊長に、あたしは慌てて話を変える。隊長は本当にギンが嫌いなのだ。



「ねぇ冬獅郎さん、あたし達の結婚、お婆様喜んでもらえるかしら…」
「そりゃ喜ぶだろ」



隊長のその言葉と優しい微笑みに、あたしは安心して、身支度を終えた。
やっぱり少し不安はあるのだ…






そして、あたし達は潤林安にある実家に無事到着。
一応甘味の手土産も持って来た。気に入ってもらえるかちょっと心配…



「ただいま婆ちゃん」
「お邪魔します」



とても広い玄関の中に入ると、小柄なお婆さんが、
パタパタと軽い足音をたてて走って来た。



「お帰り冬獅郎、乱菊さんもよぉ来たね」
「ご無沙汰しております」
「ささ、中にお入り」



優しそうな笑顔で迎えてくれた隊長のお婆さんに、
隊長に続いてあたしも家の中に上がった。


中に通された部屋から、とても良い匂いが漂っていた。その匂いに胃が動くほど。



「わぁ!美味しそう!」
「婆ちゃんの飯は天下一品だもんな」



中に入った部屋の中央にある小さなちゃぶ台の上には、
乗り切らないほどのご馳走が用意されていた。



「そろそろ来ると思ってね、お昼ご飯を準備しとったんじゃよ」



お婆さんは小皿が乗ったお盆を持って自慢そうに笑っていた。



「あっお婆様、あたしも手伝います」
「そうかい?乱菊さんは気が利くねー、じゃあこれをお願い」
「はい!」



…ーと渡されたのは、隊長の大好物の卵焼き(大根おろし付)で、
思わずあたしはクスっと笑った。隊長の卵焼き好きはどうやらここが由来のようだ。




そして、美味しそうなご飯を囲み、たわいのない話をしなが食事を楽しんだ。
何度かここに来てはご馳走になっている。
隊長のおふくろの味を覚える為に、あたしはいつも勉強しているのだ。
味付けは何かとか、調理方法などを聞く度に、お婆さんは優しく分かりやすく教えてくれた。
 
 
 
 
 
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