それは、まだまだ肌寒い3月の頃…




「おい、乱菊。朝だぞ」
「…んー………朝っ!」


あたしは心地よい隊長のモーニングコールで目が覚めた。
しかし、結婚してからは隊長が起きる前に朝食を作って
隊長を起こすのがあたしの日課になっていた今、
隊長があたしを起こす=寝坊な訳で、あたしは慌てて飛び起きた。
すると、布団から出た素肌に、朝の冷たい空気が当たって体が震えた。



「ごめんなさい!冬獅郎さん!寝坊しちゃって…」
「構わん。…それに、昨日はちょっと激しかったしな…俺も悪い」



朝向けじゃない会話をしながら、朝の挨拶を軽くすると、あたしはそそくさに
布団の横にある寝間着を手に取り、簡単に着、少し力の入らない足で
「今から朝食作りますから」と部屋を出ようとすると、隊長があたしの手を掴んだ。



「…ちょ…朝食、俺が作ったから…」
「…えっ!」



隊長は照れくさそうな顔でボソッと呟いた。
昔、恋人時代の時からご飯はあたしが作っていたから、
隊長の手料理なんて何十年ぶりだろう…

なんて考えていると、隊長は恥ずかしそうにあたしの手を引っ張り、
朝食が準備されている居間へと歩いていった。

こうゆう照れ屋なところは昔から変わらない。


居間へ入ると、2人用の小さなちゃぶ台の上には、あたしがいつも作る品数より少ないが、
ご飯・味噌汁・漬け物・のり。
そして、卵焼きを作ろうとして失敗したのだろう、少し焦げた炒り卵が置かれていた。
卵焼きを作ろうとして悪戦苦闘する隊長を思い浮かべると、
可笑しいけどとても可愛くて仕方がなかった。

あたしが小さく笑っていると、それに気づいた隊長がぶっきらぼうに「ほら座れ」と言うから、
あたしは素直に座布団の上に座る。



「お前が作る飯より、味が劣ると思うが」
「そんなことありません!冬獅郎さんの愛情がたっぷり入ってるから絶対に絶品ですよ!」
「…ハイハイ…」



こんなやり取りも慣れの隊長は、照れながらも受け流す。
そして、あたしは隊長が作ってくれた朝食を眺める。とても貴重な時間だ。


しかしー…何かがおかしい


すると、隊長が「ん」っとまたぶっきらぼうにあたしによそったご飯を渡してくれた。
炊きたてのご飯の匂いがあたしの鼻につくとー……



「んっー…」
「乱菊?」



あたしは口に手を当て、しゃがみこむ。吐き気のようなものが襲ってきたのだ。

そうか、何かおかしいと思ったら、隊長の手料理を見ても食欲がわかなかったからだ…



「おい!大丈夫か?」
「…すみません…冬獅郎さんの手料理の喜びのあまりに、自分が食欲ないの気づきませんでした…」
「アホかお前…」



ハァとため息をついた隊長が、そっとあたしに近づき、コツンと額をくっつけた。



「そーいや、お前少し顔が赤いぞ?」
「確かに…少し体がダルいかも…」
「自分の体調ぐらい把握しとけよ。…っても、多分昨日の夜、
寒かったのに布団はがしてしてたからな…それが原因で風邪ひいたんだろ。
俺も原因の1つだろうから、今日は休んでいいぞ」
「え?…いいんですか?」
「その代わり、ちゃんと四番隊に行って診てもらえよ」
「う゛っ…はい…」



しかし、隊長の手料理でさえ受け付けないのは、あたし的にも不安だ。
仕方がないが今回は大人しく四番隊に行くことにした。






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